平泉会理事 嘉藤 恵
ダダ、シュールレアリスムは、それまでの芸術における美意識や価値をことごと く破壊することから始まり、デュシャンが「芸術が死んだ」と宣言してから1世紀 が過ぎた。
20世紀は、戦争の時代で、日本においても戦争中伝統芸術及び西洋芸術は禁止 され、さらに大戦の敗戦で、芸術どころでなく文化が向上していない。
更に戦後はアメリカ文化の影響がつよく、芸術においても現代アメリカが中心であり、 その象徴であるポップアートは美術のなかに商業広告・漫画・量産品など日常にあふ れるものを主題として持ち込み、従来の芸術概念を打破することをねらった現代芸術 (アート)である。「文化史上、最悪の影響を及ぼしたのは(ロックフェラーの)近代 美術館で、ディーラー趣味、商業主義、腐ったジャーナリズムとの組み合わせ」(カー ステン)。これは現代の日本においてもまったく同じで、商業主義のアートが都市生 活に蔓延していて、最新建築による都市はとても住みにくく、精神の荒廃を助長して いる。
21世紀に入り社会は急速に変化し、世界のどこかで紛争が絶えずおきている。 そして日本国内においても犯罪多発で不安定な状態が続いている。こんな社会だから、 芸術が育たないではなく、今こそ“真の芸術”が渇望されている時なのである。
「芸術は人間のいとなみであり創造であるから、その窮 極の精神価値は人間の 持つ最高の価値でなければならない。 それは古来からその価値をみとめられている【真善美】以 外あり得ない。“真”は 芸術という仮象の世界で対象化さ れ得る。真とは、いかなる意味に於いても普遍的で あり普 遍性を持つ。真の領域に入ることは叡智の働きが必要である。 “善”もまた芸術の究極的精神性になる。そして芸術 は社会の中に意味を持って作用 するから美術にあらわれる 美や真や善は当然社会的効果を持つであろう。 “美”を知 覚し、これを体験へと深めることによって感覚的な美の中 に精神的な美 が顕現してくるのである。」(芸術学 渡辺護)
21世紀の芸術は、一人よがりの主義主張で満足せず、また新しければいいと奇抜 なことをせず、内在的象徴としての芸術の究極的内容は精神的でありその高次の精神 的昇華とともに、普遍的な【真・善・美】を探求する美の求道者でありたい。
絵画の創作は、自然や人間の愛と美への過程で心の喜びであり、この喜びによる芸 術活動により、人々の心を癒し生活に潤いを与え、平安な世の中にしたい。