平泉会代表 保坂 良平
私の[美しさ]発見は、黒こげ阿修羅の遺体と小花が教えて呉れました。
戦後間もなく、新潟の田園スケッチで涙と感動の衝撃的出合いがありました。 東京大空襲で私が育った砂町.深川の幼な友達は勿論、すべて燃え尽き焼け野原 です。 猿江公園では山に積まれた亡骸を焼却し、小名木川に浮かぶ無数の屍が、戦後訪 れた新潟のハンノキの根元に現れ、その小さな草花に命の美しさを気づかせて呉 れたのです。 又、大雪山北鎮から見たニセイカウシュッペの山々に出合った時[自分は天国に 生まれた]と明日食べるお金が無いのも忘れ、美しさに感動しました。この時美の 原点は?と、早速スケッチで凝視し確認した結果、なんと身近な物が悉く美しく、 下山の帰途次々に出合う、
人や自然や生き物に感動と衝撃の連続でした。 以後永い年月、日本中を歩き続けて、美しい日本を描きました。
何年かして隣人の、常民文化・民族学の宮本常一 先生とお茶飲む度に日本は汚れた、樹の伐採と、 家庭や工場の汚水か、空気も湖も川や海水まで汚れ 「音がする日の出」風景も見られない、 と二人で歎き合ったのを思い出します。
私は、解剖教室の人体研究と戦災の死骸と何百人もの死者と出合い、教わりました。 生きてる地球の“いのち”は掛替えなく、神々しく “美しい”という真理の姿です。
今も終わらない戦争は自然を汚し、命の冒とくで、また血流不老に無関心も命の 頽廃です。『血流不老』は流水不腐の事、加齢して血流阻害は生きものに酷な法則 ですが、防御手段はあります、心の想像力(イマジネーション) を豊かに[楽しく描 く手]作業です。
21世紀の絵画芸術は先ず、周囲に囚われず、わが星の[いのち]を慈しみ、美の 発見と描く[喜びが]心の深層にあって、真実の美を創作出来るのだと思っています。